上橋菜穂子さんの"守り人シリーズ”の完全ガイドです。
本当はそれほど興味なかったんだけど、巻末に上橋さんの書き下ろし短編が載ってるということで購入しました。
内容は守り人シリーズ各巻の簡単な紹介からその世界観を表した地図から登場人物の紹介から、割とお決まりな感じで…。(・・;) でも、買ったかいがあった…と思ったのが、始めの2巻"精霊の守り人”と"闇の守り人”を英訳した平野キャシーさんと上橋さんの対談。と、巻末の短編。よかった。(笑)
仕事で翻訳をちょっとやってたので、文学作品の翻訳の難しさはわかります。翻訳という仕事、特に文学作品の翻訳はある意味"二次創作”だと思う。なぜなら、ほとんどの翻訳は書いた原作者が翻訳するのではなく、別の人が介在してその世界観を表現するものだから。つまり、翻訳者の解釈が原作者の意図するところと全く同じであるとは限らないし、文学作品だと翻訳者には文学的センスも問われてくる。オリジナルを書いた原作者でさえ、もしその人が母国語と第2第3の言語を同等に操ることができたとしても、その文学の世界観をどの言語でも同じように表現するのは不可能だ。あり得ない。(どこかで誰かが言及してたけど、"翻訳してそのオリジナルの世界を表現できるのはオリジナルの30%ぐらい"って言ってたように思う。数値間違ってたらごめんなさい。そんなに低い数値?とも思ったけど、さもあらん、と思ったのも事実。皆さん、原文を読まないっていうのはかなり損してるってことなんです。はい。)
実は平野さんが訳した"Moribito"を読んでみたけど、どうも固い。上橋さんの文章ってそれは流れるようなリズムがあって、守り人の広大な世界を天井に穴を開けてそのまま上から覗き込んでるような錯覚に陥るんですよ。でも、平野さんの英文はカクカクしてる。流れてない。ものすごい違和感を覚えてしまって。。平野さんと上橋さんの対談を読んではっと気づいたのは、英語版の"Moribito"は純粋な児童文学として英語圏で出版されてる。アメリカでは児童書は子どもが読んで適当か?という側面でかなり厳しい制約があるらしいんだけど、そのせいだ、と。簡単な単語を使っているし、難しい構造の文章もない。守り人の世界観を世界の人に知っては欲しいけど、こうなると確かにその物語の魅力を半減させてしまう。。けれど、上橋さんもこの児童書を児童書として出版しているからには、文章にはかなりの制約があったはず。それでも、大人が読んでも耐えうる大きなものを感じる。なんだろう、それって。上橋さんが元々文化人類学者だから? いえいえ、平野さんも文化人類学学んでる。文学に対するセンスと才能かなぁ。。
ま、このガイドの書評としては、う〜ん、、守り人シリーズを知ってる人が巻末の短編を読んでもらうにはいいけれど、かな。(笑) ごめんなさい、上橋さん。