久々にいい映画を観ました。
全編モノクロで、一見古い時代の映画?とも思えたんだけど、よく観ていくとそうでもなさそう。。モノクロにしたのはこの映画のテーマを表現するのに合ってた。観た後でそう思いました。
主に出てくるのは91歳の老女と犬、そしてもう随分古くなってしまった木造のお屋敷。このお屋敷が古くてぼろぼろで、あちらこちら修理しないとほんとに美しくないんだけど、それでも素敵なんだなぁ。窓ガラスが今のように大きな1枚ガラスじゃなくて、小さな木枠で囲んだガラス板がたくさん並んでるところがね。そしてそれが大きなお屋敷で、それが森の中にあるのがまた素敵。
撮影した方は監督の旦那さまで、ヨーロッパで最高のカメラマンの一人と言われてるアルトゥル・ラインハルトさん。すごくいいのは、昔の歪みのあるガラスを通して映した映像がいろんな箇所で使われていて、そこから主人公の昔の思い出も映し出してるとこ。あの歪んだ映像が過去と現在を自由自在に行き来させている感じがして、この映画にとても合ってる気がしました。監督が女性だから、というのもあるかなと。私の好きなアメリカ映画「ダーティ・ダンシング」の監督は女性で、ダンスをしてる主人公の男女を鏡に映してそれを撮影する、という手法を取っていました。つまり、観客は男女がダンスしてる部屋の小さな鏡から主人公達を見つめる形になります。好きでしたねぇ、私、それが。女性だからできることだと思ってた。男性にはそういう感性がないから。(笑) この映画のその撮影の手法は監督か撮影のどちらのアイディアかはわかりませんが、監督の意向もあったんじゃないかと推測されます。元々監督が91歳の女優の才能が生かされる映画を作りたいという思いで脚本を書いて撮った作品だから。
最後、もう死のうと思う主人公が大切なことをやり残していたことに気づいたのはよかったですね。そこからはやること早くて、ぱぱぱっといろいろ決めていったのもよかった。人生、大事なことってなかなか気づかないのが神様意地悪なところで。。彼女の最期のところもちゃんと大事に撮影されていてよかった。
愛犬フィラ(フィラデルフィア)は可愛かったわぁ〜。ご主人様にざくっと(?)とりあえず忠実で、たまにご主人様の朝食をちゃっかり食べちゃうんだけど。(笑) あと、映像のかなりの部分、接写で撮ってあります。フィラの顔だけアップで背景ぼけてるとか、老女の手元のティーカップだけアップで背景ぼかしてるとか。。映画で広角で撮影しないのって、なかなか珍しいと思うんですけど。でも、だからどの部分を切り取っても映像がきれいなんですよね。
よかったです。まだ公開されてるかな。機会があったら是非ご覧になってみてください。
木漏れ日の家で